「OOHの効果測定を行う方法はある?具体的な手法を知りたい」
「そもそもOOHでも効果測定は必要なの?」
OOH(Out Of Home)広告は、定量的に効果測定をすることが難しいため、諦めている方も多いのではないでしょうか。しかし実は、複数の効果測定手法を組み合わせることで、OOHの効果測定の精度を高めることは可能です。
そこで今回は、伝統的な方法から最新のトレンドまで、OOHにおける効果測定手法を11個詳しく解説します。
OOHに適した効果測定の手法を理解し、より効果的な広告戦略を立てられるようになりましょう。
1. OOHの効果測定は難しい?効果測定の必要性
PDCAサイクルを回して広告効果を高めるためには、効果測定が不可欠です。しかしOOH広告の効果測定は、Web広告のように定量的に効果測定をすることが難しく、同じ指標は使えないため、多くのマーケティング担当者を悩ませる課題でもあります。
伝統的には、国勢調査やパーソントリップ調査、駅の乗降者数・交通量などの統計情報をもとに効果を測定する方法がとられてきました。しかし、これらの方法はあくまで『推測』に過ぎず、データが出揃うまでの時間が必要なため、例えば新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言下のような状況では、こうした方法での測定が不可能になることもありました。
また、統計情報に基づく効果測定では、視認数を推測することはできても、クリエイティブ(広告デザイン)の良し悪しに基づく比較はできません。そのため、掲出場所の検討はできても、クリエイティブやメッセージングに関する検討ができないというデメリットもあります。
OOHは、ブランド認知度向上のように認知広告として用いられるケースが多いため、その点も考慮した効果測定方法を実施する必要があります。
認知広告についてはこちらの記事もご覧ください。(省略可能)
2. OOHの効果測定に使える具体的手法11選
以下からは、OOHの効果測定に使える具体的な手法を11種紹介します。効果測定手法を選ぶにあたっては、例えばリテール商材なのかBtoB商材なのかといったように、商材特性を活かしてどの測定方法が適しているかを検討することが大切です。
- 来店者数やWeb流入数の変化を調べる
- ソーシャルメディア分析
- クーポンの利用数を調べる
- アンケート調査を行う
- パンフラックの部数を調べる
- 期間ごと・地域ごとの販売状況を調べる
- リテールメディアでの販売状況を調べる
- メディアミックス含めての差分をチェックする
- 認知度調査/ブランドリフト調査を行う
- アポ取得率、コンペ勝率を調査する
- 視認性トラッキング
(1)来店者数やWeb流入数の変化を調べる
広告掲出前後の来店者数・Web流入数の比較を行うことで、広告の誘引力を計測することができます。特にWebを組み合わせた調査は定量的に比較しやすいというメリットがあるのもの、コンバージョン(商品の購入等)によりOOHによる差分を測ることは難しいため、指名検索数やオーガニック流入数を調査するのがおすすめです。
広告にQRコードを組み込み、特定のアドレスを経由させることで、さらに詳細な調査を行うことも可能ではありますが、QRコードは利用者が立ち止まって読み取る必要があるため、全ての媒体で効果的とは限りません。また、そもそもQRコードの掲出を許可していないOOH媒体も多くあります。
基本的には指名検索による測定でも十分な効果が得られますが、より測定の精度を高めるためには、他の測定方法も組み合わせることが重要です。
(2)ソーシャルメディア分析
ソーシャルメディア分析では、ソーシャルメディアモニタリングツールを用いて、広告に関連する言及数やエンゲージメントの増減を追跡します。これにより、広告がどれだけ話題になっているか、またそれが消費者の間でどのような反応を引き起こしているかを把握することができます。
ソーシャルメディア分析を行う場合、広告に特定のハッシュタグを掲出するのもおすすめです。そうすることで、広告に触れた人々がソーシャルメディア上でそのハッシュタグを用いてコメントやシェアをする可能性が高まり、追跡も容易になるため、広告のリーチや影響力をより正確に測定することが可能です。
また、エンゲージメントの分析を通じて、広告がどのような感情や反応を引き起こしているかを理解することも重要です。ポジティブな反応が多ければ広告が成功している証拠となり、ネガティブな反応が目立つ場合は広告戦略の見直しが必要となるでしょう。
このように、単に視認者数を推測できるだけではなく、視聴者が抱いた印象も直接的に把握できるのがソーシャルメディア分析の魅力といえます。
(3)クーポンの利用数を調べる
チラシ等にクーポンを添付し、その利用状況を調べる手法は古くから用いられてきましたが、OOHでも活用することが可能です。
例えばOOH広告にクーポンコードを掲出することで、ユーザーがその広告を見て反応したかどうかを調査できます。実際の事例では、通信事業者のpovoが、新宿駅等に掲出したOOHにクーポンコードを添付しており、効果測定に用いたものと考えられます。
あ、新宿ミロードでも #povoギガ活かるた 発見🤳#povo #ギガ活 #povo2周年 pic.twitter.com/duFABAp7Wh
— povo (@povo_official) October 15, 2023
(4)アンケート調査を行う
アンケート調査も、OOHの効果測定としてよく用いられる方法です。例えば来店時に「どのようにしてこの店舗を知りましたか」といった質問をすることで、ユーザーがどのような経路で店舗や商品に興味をもったかを直接確認できます。
また、Web上でのアンケートも効果的です。例えば、資料請求やサービスの申し込みの際に簡単なアンケートを設けることで、ユーザーがどの広告を通じてWebサイトに訪問したのかを知ることができます。
アンケート調査を行い、調査結果をもとに広告戦略を成功させた事例としては、きぬた歯科の屋外広告戦略が挙げられます。きぬた歯科では、特徴的な広告を製作するに至った経緯について次のように紹介されています。
きぬた歯科の看板は、設置場所やデザインにこだわりがあります。
それは、過去にきぬた歯科の患者様に来院理由のアンケートを取ったところ、「看板を見たから」と回答された方が非常に多かったためです。アンケート結果を受けて、看板の数を増やしていったところ、現在ではきぬた歯科の看板の数は約340枚にものぼります。
また、よりインパクトのあるデザインにするために、看板に私自身の顔写真を掲載し、背景の色彩も鮮やかなものにしています。「きぬた歯科 看板 うざい」と検索されるようになったきっかけとは – きぬた歯科
このように、アンケートを通じて広告の効果やユーザーの反応を理解することは、より効果的な広告戦略を組み立てるうえで非常に有益なステップといえるでしょう。
横浜駅から横浜ビブレに向かう道にきぬた歯科。
通行人とドライバーと正対するかなり良い場所。夜でも黄色は凄く目立つ。 pic.twitter.com/gZ1fL2Gcr5— 加藤誠也 街中広告マニア (@adbrex_) October 10, 2021
(5)パンフラックの部数を調べる
OOHの掲出に際し、パンフラック(パンフレット置き場)やポケット付ポスターを設置できる場合には、配布されたパンフレットの部数を調べるのもひとつの方法です。
パンフレットの配布状況により、広告に興味を持った人々がどれだけパンフレットを手に取るかを調査できるため、広告の訴求力や魅力に改善の余地があるかを検討できます。
また、パンフレット内にQRコードを記載すれば、QRコードの掲出が難しいメディアでも簡単にエンゲージメントを分析でき、Webサイトへの誘導により購買行動を促すことも可能となります。
資生堂によるキャンペーンでは、広告と一緒にカードを配布し、Webサイトへの流入とサービスの利用を促していました(参照:資生堂、キャンペーンと連動した屋外広告登場 設置されているカードの2次元コードからメイクを試すことも – CreatorZine)。
(6)期間ごと・地域ごとの販売状況を調べる
食品や消費財など小売店で販売される商材では、OOHを掲出する期間・地域ごとの販売状況等を調べることも、基本的な効果測定の方法です。
広告掲出前・掲出中販売状況等を比較することで、OOHがどのような影響を与えたのかを明確に把握しましょう。また、掲出終了後の販売状況を追跡することで、広告の長期的な影響も評価することができます。
地域ごとの分析では、広告を掲出しているエリアと、掲出していないエリアの販売状況等を比較することで、広告の地域的な効果を測定します。OOHではエリアターゲティングが重要な要素となるため、地域ごとの比較も必ず行いましょう。
アンケート調査と組み合わせ、「どの地域から来店されましたか」といった質問を加えると、店舗数が少ない場合であっても地域ごとの広告効果を測定することが可能です。
(7)リテールメディアでの販売状況を調べる
小売店で販売される商材で、さらに一歩進んだ効果測定の方法として、リテールメディア(店頭に設置されたメディア)を利用し、POS連携により販売状況をチェックするというものもあります。
具体的には、自社商品が取り扱われている店舗に広告を出稿し、その店舗での販売状況を、広告がない他の店舗と比較します。そうすることで、店頭での広告掲出が販売にどのような影響を与えているのかを把握できます。
この方法により、特定の販売チャネルにおける広告の直接的な影響を捉えることができ、地域や店舗の特性に応じた広告の効果を分析できるため、よりターゲットに合わせた広告戦略を立てることが可能です。
また広告効果が可視化されやすいため、クリエイティブのABテストとして利用することも有効です。
(8)メディアミックス含めての差分をチェックする
OOHの効果を測定する際には、他のメディアとの組み合わせを考慮した総合的な分析も重要です。OOHはブランド認知度の向上に特に効果的なため、Web広告などの刈り取りメディアと組み合わせることで、より詳細な効果測定と大きな広告効果を期待できます。
この手法では、Web広告などの他のメディアの出稿量を一定に保ちつつ、OOHの実施有無による効果の違いを比較します。例えば、OOH広告を実施している期間としていない期間で、Web広告のクリック率やコンバージョン率の変化を分析することで、OOHが最終的なコンバージョンにどのように貢献しているかを把握することが可能です。
このようなメディアミックスを活用した分析は、OOHの真の価値を把握するのに有効です。すなわち、OOHに対する効果測定単独では捉えにくい、ブランド認知度の向上や購買意欲の刺激など、間接的な効果も評価できます。さらに、他のメディアとのシナジー効果を理解することで、より効率的な広告戦略を立てることも可能になります。
(9)認知度調査/ブランドリフト調査を行う
OOHがブランド認知度向上に効果的である点を踏まえると、効果測定により認知度調査・ブランドリフト調査を行うことも欠かせません。特に大規模なマスマーケティングを実施する場合には、キャンペーンの前後で行う消費者調査を通じて、ブランド認知度やイメージの変化を分析することが重要です。
具体的には、広告キャンペーンを実施する前に一定の消費者グループを対象に調査を行い、ブランドに対する認知度や印象、購入意向などの基準データを収集します。その後、広告キャンペーンが一定期間行われた後、同じ消費者グループに再び調査を実施し、初回のデータと比較します。
この比較分析により、広告キャンペーンがブランド認知度やイメージにどのような影響を与えたかを明確に把握することが可能です。ブランドリフト調査は、消費者の認知や態度の変化を測定するため、特に新しい製品やサービスを市場に導入する際に有効です。
美容クリニック業界で高い知名度を誇るにしたんクリニックでは、マーケティングに用いるKPIは知名度だけであると公言しています。
――マーケティングのKPIは知名度だけですか?
はい。知名度だけです。「知っているか、知らないか」という、これ以上わかりやすい指標があるでしょうか。今の時代、ニーズが多様化しているため、すべての人の支持を集めることはほぼ不可能です。100%のうちの5%でも10%でもいい。熱烈なファンになってもらえれば、そのほかの人から嫌われても構わないと割り切っています。
にしたんクリニックはなぜタクシー広告 GROWTH に広告を出し続けるのか?:エクスコムグローバル西村誠司代表が語る、最強のマーケティング戦略 – DIGIDAY
(10)アポ取得率、コンペ勝率を調査する
OOHでBtoB商材を訴求する場合、アポイントメント取得率やコンペティション勝率の調査を行い、広告展開前後での営業成績の変化を比較分析することで、OOH広告がビジネス関係者に与える影響を評価することができます。
具体的には、オフィスビルやビジネス街など、ビジネス関係者が頻繁に訪れる場所にOOH広告を展開したときに、広告を目にしたと考えられる企業への営業活動において、アポイントメントの取得率や提案コンペティションの勝率を測定します。
この手法のメリットは、広告が直接的なビジネスチャンスの創出にどれだけ貢献しているかを具体的に測定できる点にあります。特にBtoB市場では、一般消費者市場と異なり広告の影響が直接的な商談の機会や受注に結びつくことが多いため、アポ取得率やコンペ勝率は重要な指標となります。
また、この方法により、特定の業界やターゲット企業に対する広告の効果を評価し、効果的なBtoBマーケティング戦略を策定するための貴重なデータを得ることが可能です。
(11)視認性トラッキング
近年では、GPSデータやモバイルトラッキング、ビデオ解析技術を使用し、OOHの付近を通行するユーザーの数や視線を解析する効果測定も行われています。
こうしたテクノロジーによる効果測定は、分析精度が高く、またリアルタイムでの分析も可能であるという点において、従来の効果測定では行えなかった精緻なデータを得ることができます。
ただし、比較的調査費用が高額なため、大規模なプロモーションを行った際などに限定的に活用するのがおすすめです。
効果的なOOHの出稿はプロの広告プランナーに相談しよう
今回は、OOHで活用できる効果測定の手法について、具体例を挙げつつ解説しました。
OOHには様々なメディアが含まれ、またメディアごとに特性が異なります。そのため、商材特性も活かし、どの測定方法が適しているかを把握しましょう。
また、効果測定を行う前の段階として、掲出媒体・エリア・時期等をしっかり絞り込むことが重要です。そのため、早い段階で、商材ごとに適した媒体やエリアについて、広告のプロに相談することをおすすめします。
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